間違えた君に冷えピタを
間違えた君に冷えピタを
十月三十日〜十一月三日
京都に着いた。
長い長い夜行バスの夜を経て迎えた、朝は古都を優しく包む。
眩しい日差しが寝ぼけまなこに差し込んでくる。
そもそも京都、大阪に来た目的は旅行ではない。
京都にあるからあげ梅しんというお店の唐揚げを大阪府立大学の学祭で導入できるようになり、
その契約担当だった私がTFT-UAの活動の一環として訪れたのだ。
大好きな唐揚げを学祭で販売できることとともにTFT-UAの活動の幅を広げられたことが嬉しい。
いつか支援先の子供達にも唐揚げを食べてもらいたい。
前半は京都にて、二日から始まる大阪府立大学の学祭に合わせて大阪に行った。
関西にこんな長期滞在するのは初めてで少し新鮮だった。
①マック食いすぎ事件
京都に来たというのに、私はマックばかり食べていた。
ゲストハウスの近くにマックがあって、私はゲストハウスとマックを何度も往復した。
帰りの新幹線の中でまでマックを食べた。
TFTの代表だというのに情けない。
マックが大好きというわけでも観光が嫌いというわけでもない。
ただ「選ぶこと」「考えること」から逃げていたのだ。
考えなくてすむ。
初めての他大学祭導入という状況のなかで、一人、知らない土地、溜まっていたToDoもあり、
頭も手もいっぱいいっぱいだった私は考えることを一つでも減らすためにハンバーガーをかじった。
②学祭は本当におもしろい
(私もだが)大学生という生物は本当におもしろいものだ。
情けなくて、カッコ悪くて、どうしょうもないけれど、愛すべき存在なのだ。
(もちろん本当にどうしようもない人もいる。社会に迷惑かける人は愛すべき存在にはなれない。)
観客ゼロのステージで歌う青年の声は虚しく響く。
ボランティアセンターで「時間がない」と言いながらイカをさばく三人組。
ヨウ素デンプン反応により中が青緑色になってしまい「カビ仮面」と呼ばれてしまう名物のV仮面まん。
原付と並走しながらおしゃべりする超早い自転車少年。
中でも印象的だったのはメインステージで行われるクイズイベントだ。
唐揚げを揚げながら横目でメインステージを見ていた。
何人かの参加者がクイズに挑戦していく一昔前のテレビ番組のようなコンテンツだ。
クイズ自体は普通に進んでいくのだが、私を驚愕とさせたのはその罰ゲームだ。
司会者は甲高い声で言う。
「はい!間違えてしまった〇〇君には冷えピタを貼ってもらいま~す!」
「!?」
五度見した。
耳が壊れたのかと思った。
間違えた青年のおでこには冷えピタが貼られる。
学祭のクイズ大会に出るほど元気な彼が今最も必要としていないアイテムである。
意味がわからない。
誰がどういう経緯でこの罰ゲームを思いついたのであろうか。
誰がこの意味を理解して行なっているのだろうか。
貼る側も貼られる側も見る側も意味がわかっていないのではないか。
十一月の学祭で健康体の大学生がクイズを間違える度に冷えピタを貼られる光景は実にエモかった。
③徹夜mtg
学祭前日の夜、泊まるところがない私はTFT-OPU(大阪府立大学のTFTサークル)の代表のまっちゃんと夜の大阪を彷徨った。
まっちゃんが住んでいるのは大学から遠く離れた街にあるシェアハウスで、今夜は彼もまた泊まるところがない。
私はホームレスをしていたため一晩くらいの野宿は余裕だったので
「公園で寝ればよくね?」
という暴挙に繰り出そうといしている中、まっちゃんは必死に宿を探してくれた。
そして見つかった。まっちゃんが入っていたサークルの先輩の家である。心優しい先輩は私たちを優しく出迎えてくれた。
私に至っては全くの他人である。東京から来たわけもわからない哺乳類をやすやすと家にあげるなんて、こちらが心配になるレベルの優しさだ。
ありがとうございました。
学祭一日目の夜はカラオケボックスに入りひと晩中話した。東京からTFT仲間も駆けつけて三人で熱く語った。
何にも任されていないはずに、学生業界の全てを背負ったように錯覚すらした。
楽しい時間はあっという間で、フリータイムは終わった。
まっちゃんはラスト一時間半くらいでダウンした。
私たちに土下座をする姿勢でソファーの上で眠りに落ちた。
大学横のカラオケボックスのソファーの上で土下座をしたまま動かなくなるまっちゃんは少し面白かった。
TFT-OPUはこの学祭で四二三食販売し、売り上げ十六万円以上という驚異的な数字を残した。
初めての学祭導入、メンバーのほとんどが一年生、他の唐揚げ屋台もある中四百円の値段という環境の中でここまでの数字を出したTFT-OPUのメンバーはすごい。
サイヤ人で言えば戦闘力五十三万くらいある。
かくしてからあげ梅しんの学祭導入は堂々の旗を掲げスタートをきった。
これからも様々な催事に現れることになるだろう。
全てはお腹をすかせた子供達のために。